8/3 埼玉武蔵ヒートベアーズ 3-3 神奈川フューチャードリームス(熊谷市さくら運動公園野球場)
2回目のおふろcafeデーは、この日限定で黄色の水玉ユニフォーム着用しての試合だった。花火も打ち上げられ、射的や輪投げなど縁日の遊びも出来るお祭り仕様の演出も。4時間28分の熱戦は、タイブレークの末にドローとなった。
ベアーズ先発は小野寺賢人。前回おふろカフェデーで危険球退場となった雪辱を期す。さらにこの日は、兼任投手コーチを務める辻空が、トミー・ジョン手術からリハビリを経て、実戦に復帰すると伝えられている。球場には辻空を応援する幕やユニフォーム、タオルが多く見られた。
立ち上がり小野寺は二死を取ってから内野ゴロエラー、捕手の送球エラーが続き、1点を失ってしまう。2回にも、ヒットで出したランナーに走られ、そこからタイムリーを浴びて1点。2回を終わって0-2とリードを許す展開となった。
神奈川の先発は清岡龍太郎。ベアーズ打線は2回に一死満塁のチャンスを作ったものの、タイムリーが出ず無得点に終わった。小野寺は3回以降よく抑えて攻撃へをつなげる。4回裏、一死から阪口竜暉がレフトへ豪快な一発を放った。1-2と1点差に詰め寄り、球場は俄然盛り上がる。
6回裏は清田育宏から始まる攻撃で神奈川を攻める。清田がヒットで出ると続く根井大輝が四球を選んだ。ここで神奈川は投手を清岡から高橋康二にスイッチ。しかし暴投でランナーが進み、さらに申告敬遠で一死満塁となると、投手は誉田に代わった。誉田も町田隼乙に痛恨の死球を与え、ついに押し出しで同点となる。その後は凡退で同点止まりだったが、ともかくも試合は振り出しに戻った。
ブルペンには背番号16の姿があった。辻空が肩を作っている。その時は確実に近づいていた。7回のマウンドに上がった小野寺が、三者連続の空振り三振を奪って、花道を作る。出来れば勝ち越しておきたかったが、7回を終わって同点のままだ。
「ピッチャー 小野寺に代わりましてーーー 辻空」
8回表。鳴り物が禁止となる時間帯のため、聞き慣れたあの登場曲はかからない。だが大きな「空」コールが背中を押す。2021年9月5日栃木戦以来、697日ぶりの公式戦のマウンドに、辻空が上がった。リハビリとトレーニングを意欲的にこなし順調にステップを踏んできたとはいえ、昨年6月に手術をしてから1年1ヶ月が過ぎていた。
「ブルペンでは普通って感じでした。試合が長かったし、コーチの仕事もしながらだったんでちょっと大変でしたが、打たれるイメージは全くありませんでした」
ストレートはいきなり152km/hを計測した。内藤をサードゴロ。鎌田をファーストゴロ。藤田の打球は詰まったものの内野安打。続く佐藤にも内野安打を打たれるが、ランナーがタッチアウトで3つのアウトを取り終えた。最速は153km/h。熊谷は球場ガンがほぼ正確と言われている。投手からも見える位置に球速表示のあるこの球場を、辻は復帰の舞台に選んでいた。
「シートバッティングで153が出てたんで154を狙いましたが、出ませんでしたね。フォークだけは抜けましたが、スライダーは良かったです。今日は三振が取れなかったので、次は三振を取りたいですね。たくさんの人に支えられてきたので感謝の気持ちでいっぱいです」
ベアーズに入ってから、リハビリの間も、たくさんの輪が広がり、多くの人に支えられてきた。それをマウンドで思い出し、少し「うるっとしかけた」が堪えたという。14球のマウンドは、野球人生の中でも大きな一歩として次に繋がっていくだろう。
辻の復帰登板はまずまず。あとは試合を勝利で飾るだけだった。
しかし、神奈川も勝ち継投に入ってきた。8回裏は増子、9回は植田が立ちはだかり、ベアーズにヒットを許さない。長時間の熱戦の決着は10回タイブレークに持ち込まれた。
10回表を任されたのは、芦田丈飛。タイブレークの無死2塁からバントで一死3塁。犠飛で1点が神奈川に入った。
10回裏ベアーズ最後の攻撃。神奈川は回跨ぎの植田がマウンドに上がった。無死2塁から根井大輝が送りバント。一死3塁から阪口が倒れて二死。しかしここで投手が暴投し、三塁ランナーの三浦豊が生還。ついにベアーズに1点が入り、同点となった。上田が死球、町田が歩いてサヨナラのチャンスを作るが、惜しくも同点止まり。ロースコアながら4時間28分続いた熱戦は、3-3でドローとなった。
辻空の復帰戦という意味でも、優勝争いのためにも、この一戦は大事な試合だった。惜しくも勝利で飾れなかったが、負けなかったことには価値がある。
先発の小野寺賢人 7回120球2失点(自責点1)被安打3奪三振16与四球1
「まっすぐが良かったのでどんな球でも三振が取れました。あとは体力ですね。6回で足つってたので。(16奪三振に)15じゃないですか?ちょっと数えていいですか…16?え、やば!今までそんなに取れたことないですね。空さんに繋ぐというのはずっと意識してました。試合壊しちゃいけないって。今日は曲がなかったでしょう。曲がかかってたら泣いてたと思います」
4回に反撃のソロホームランを打った阪口竜暉
「チームのことは何も考えてなかったです。1本ヒットが出てたので、楽な気持ちで打席に入れました。相手の投手も分かっていて、イメージ通りの球が来たので上手く打てました。でも後の打席が悪すぎたので…実力不足です。4番に戻れるように頑張ります」
(写真: 株式会社中原写真事務所)
(記事: HISATO)