9/16 埼玉武蔵ヒートベアーズ 12-8 信濃グランセローズ(セキスイハイム松本スタジアム)
BCリーグチャンピオンシップの第一戦は松本で行われた。息詰まる投手戦からのタイブレークが15回まで続き、15回表に8点を奪ったベアーズが6時間25分の激戦を制した。
由規が台湾から帰国し、投手コーチとしてベアーズと再契約となった。このチャンピオンシップの松本からチームに合流。投手としての出場はないが、選手にとっては頼れる存在となる。
3勝勝った方がリーグチャンピオンという決戦シリーズ。初戦の先発を任されたのは、もちろんエース小野寺賢人だった。立ち上がり2回をパーフェクト。それ以後もヒットは散発に抑え、危なげないピッチングが続いた。
一方信濃の先発は、大方の予想を覆して元オリックスの荒西祐大だった。こちらもランナーは出すが、要所を締めて無失点のピッチング。完全に投手戦の展開となった。この時点ではその後にやってくる嵐など予想もつかない。
スコアボードには0が並ぶ。6回で荒西はマウンドを降り、7回には牧野が上がった。どちらが均衡を破るのか。先手を取ったのは信濃だった。7回裏、先頭の和辻が内野安打で出塁。続く永澤が送りバント。この後ジェスが四球で歩き、山崎が初球を打ってタイムリー。信濃が1点を先制した。その後は後続を断ち、この回で小野寺はマウンドを降りた。
何とか嫌なムードを断ち切りたいベアーズ。8回表、信濃の投手は牧野から福田に代わった。二死を取られた後に、打席に入ったのは清田育宏。力強いスイングで放った打球は右中間深くへ飛び、貴重な同点ホームランとなった。ベンチからはナインが飛び出す。一気にムードが変わり、「行ける」という空気が生まれた。
ベアーズの継投は8回裏、石田駿が上がった。この日の石田は見事に三者凡退。流れをベアーズに、という意気込みが伝わる投球だった。
しかし打線はまだ苦戦が続く。9回表に福田から代わった吉原が二者連続死球を与え、無死1、2塁とチャンスになるが、根井大輝がスリーバントを失敗すると、ここでまた投手交代。右の石本が、青木玲磨を抑えてこの回は無得点で終わった。
9回裏のマウンドに上がったのは芦田丈飛。3人でピシャリと抑え、気迫のピッチングを見せた。あとは得点を取るだけだ。
試合は延長タイブレークにもつれ込んだ。リーグ戦では10回のみだが、チャンピオンシップの規定では、決着がつくまで無制限となる。毎回無死2塁のスタートだ。
10回表、マウンドには信濃のクローザー足立が上がる。ベアーズの攻撃は町田隼乙から。町田が一ゴロの間にランナーが3塁に進み、一死3塁。続く上田大輝が四球を選び、さらに盗塁成功。一死2、3塁のチャンスとなった。打席には前の試合からここまでノーヒットの伊藤康人。持ち前の鋭いスイングでライト線を抜き、勝ち越しの2点タイムリーとなった。
3-1とタイブレークでは大きな2点が加わった。10回の裏には辻空の名が告げられ、クローザーとしてマウンドに上がる。盤石と思われたが、しかし三振で一死を取った後、代打の藤原にヒットを打たれ、古屋の二ゴロでランナーが生還。続く宇佐美、小西と連打を浴びて3-3と、この回同点に追いつかれてしまう。
さらに続くタイブレーク。13時から始まった試合だったが、照明にも明かりが灯る。応援のボルテージは下がらない。トランペット、トロンボーンも鳴り響く。11回、12回と無得点に終わっても、「絶対勝ちましょう!」「次の回必ず点を取りましょう!」と諦めない声援が続く。
11回は倉橋瞳人が登板。ランナーを出してピンチを作りながらも最後は三振に切って取り、珍しく吠えた。「アドレナリンが出ました」と言うように、各選手が集中し、気迫を見せていた。12回には武内風希に継投。先頭のバントヒットから一死満塁フルカウントまでサヨナラのピンチが続いたが、無失点で切り抜けて、これも珍しく吠える姿を見せた。
13回の表に金子功児の塩本からタイムリーを放ち、ベアーズが4-3と1点勝ち越した。しかしこの裏に回跨ぎの武内が南出にタイムリーを許してしまう。4-4とタイブレークは継続。一進一退の攻防は続き、どちらも決め手を欠く状態が続いていた。
ベアーズは武内から菅原宗一郎へと継投し、信濃は13回から塩本が登板。そのまま15回のマウンドにも上った。そしてついに15回、先頭伊藤の四球から始まり、この回一気に「熱熊打線」が爆発した。清田のタイムリー二塁打、根井の走者一掃タイムリー二塁打、青木玲磨がタイムリー、町田がタイムリー三塁打で一気に10-4と点差を付ける。信濃ベンチはたまらず塩本から吉岡にスイッチするが、さらに上田、伊藤がタイムリーで12-4と、この回8点を挙げた。
8点をもらい、15回裏に登板したのは太田大和。苦しい投球で4点を失うが、大量得点が功を奏してベアーズがついに14-8で勝利した。6時間25分。両チームで計32安打が乱れ飛び、投手計16人をつぎ込む大激戦となったCS第一戦。試合終了時刻は19時40分を回っていた。選手も、長時間声を嗄らしたファンも、全員で勝ち取った勝利だった。
CSといえば2年前に滋賀と戦った「守山の死闘」がよく話題になるが、この「松本の死闘」も長く人々の記憶に刻まれていくことだろう。
小野寺賢人(先発7回1失点 被安打5 奪三振3 与四死球2)「点は取られてしまったんですが、自分が投げた後は『頑張ってくれ、勝ってくれ』という気持ちで応援していました」
清田育宏(ホームランとタイムリー)「疲れました…。ホームランは打った瞬間行ったと思いました」
根井大輝(走者一掃のタイムリー含む3安打)「調子は上がってきていると思います。明日も応援よろしくお願いします」
辻空「すみませんでした!!」
(記事: HISATO)