9/25 埼玉武蔵ヒートベアーズ 12-3 信濃グランセローズ(熊谷さくら運動公園野球場)
雨で水を差された格好になったBCリーグチャンピオンシップ。1勝1敗1分と全くの互角で迎えた第四戦はベアーズ発祥の熊谷で、熱熊打線が炸裂。先発に回った長坂拓夢が8回130球の見事な投球を見せた。
ベアーズは長坂拓夢が先発登板。17日の中野では中継ぎ登板し、3イニングを無失点に抑えている。信濃はシーズン12勝で最多勝の左腕・牧野憲伸が登場する。ベアーズはこの日、片山博視が欠場。芦田丈飛がBC選抜戦で筑後へ飛んでおり、ベストメンバーは揃わない。しかし、今まで苦しい中を助け合い、一丸となって戦ってきたベアーズだけに、困難にも総力戦で立ち向かう。
長坂は立ち上がり、先頭の古屋にフルカウントからヒットを許し、後続を打ち取ったが、1回で25球とかなり球数を要した。一方の牧野は、先頭の伊藤康人を一ゴロ、2番髙島輝一朗を見逃し三振、3番清田育宏を空振り三振と10球でスリーアウトを取る完璧な立ち上がり。
このまま進むかと思われた2回裏、熱熊打線が火を吹いた。二死から青木玲磨が四球で出塁、続く金子功児が死球、町田隼乙も四球でノーヒットで満塁となる。ここで打席はチャンスに強い上田大輝。弾き返した打球はセンターへ抜け、2点タイムリー二塁打となった。なおも2、3塁のチャンスから伊藤がセンター返しでタイムリーヒット。2人が帰ってベアーズはこの回4点を先制した。
続く3回裏には青木のタイムリーで5点目が入り、5回には金子の犠牲フライで1点追加。5回までに6-0とベアーズが6点の差をつけてリードする理想の展開。投げては長坂が素晴らしいピッチングで信濃に得点を許さない。苦しい投手事情を自分が背負うと言わんばかりに、スコアボードに0を重ねていった。
6回から信濃は継投に入り、牧野に代わって吉岡が登板した。この回先頭は上田。今シーズンチームで唯一ホームランがなかった上田だが、右中間へ放った打球が伸びてスタンドを越えた。歓喜のホームランで1点を追加して7-0。7回裏にはヒットと四球で満塁となり、好調の町田に打席が回る。投手は左の吉原に代わっていた。3球目、強く振り抜いた打球はレフトスタンドに消える満塁ホームランとなった。さらに髙島にもタイムリーが出てこの回5点追加。ついに12点という大量リードを奪った。
長坂は8回も続投し小西に3ランを打たれたが、8回を投げて130球の熱投がベアーズに流れを呼び込んだ。
9回のマウンドに立ったのは菅原宗一郎だった。2四球を出したもののヒットは出さずに切り抜け、12-3でベアーズが勝利した。チャンピオンシップ対戦成績は2勝1敗1分。初のリーグチャンピオンにあと1勝というところまでこぎ着けた。
ヒーローインタビューで長坂は、背番号17のユニフォームを掲げて見せた。この日試合前のアップの際にも「力を借りる」と着ていた芦田のユニフォーム。この場にいない者も出場していない者も、チームが文字通り一丸となって戦っている。ここぞという時に底力を見せる、ベアーズらしい野球だった。
長坂拓夢(8回 130球 3失点 被安打7 奪三振7 与四死球0)
「デラにだいぶお世話になったので、その分同い年の僕が頑張るしかないのと、今福岡にいる芦田くんが絶対松山でやりたいらしいので、その気持ちを持って投げました。完封も目の前にあったんですけど、ま、ちゃんと点を取られるところが僕らしいので、これでいいのかなと。逆に完璧すぎてもちょっとあれなんで、これが僕です。今日はナイターだったんで、午前中にハレニワの湯で交代浴をしてきたので、その結果だと思います。バッター陣とピッチャー陣が噛み合っている状況なので、明日もいっぱい打ってくれて、武内が試合を作ってくれると思うので。最高のチーム状況だと思います。(ファンの皆さんへ)今日も『勝たせる応援』が僕に響きました。みんなで一緒に松山へ行きましょう」
2点タイムリーとホームランの上田大輝
「(満塁でまた回ってきた)正直なところ町田に打ってくれと思ってたんですけど、フォアボールで回ってきて。序盤のチャンスでここしかないと。まっすぐを狙ってたんですが、アバウトでコントロールに苦しんでいたので、見ていくというよりも、僕には珍しく初球から打ちに行きました。むしろゾーンで行こうと持ったら、たまたまいいところに来たので打てて良かったです。(勝負強い打者になっている)シーズン序盤よりは『行ってやる』って感じです。そういうメンタル面も大事かなと。(ホームランは)まさかここで出るとは思わなかったです。吉岡さんも松本で打ってましたし、嫌な感じはなかったですね。先頭だったんでまず塁に出ようと思って、カウントがこちら有利に出来たんで、まあまっすぐだろうなと。強振はしてないですけど、たまたまいいポイントでいけたという。ただ、感触は完璧でした。(チームで一人ホームランがなかった)みんなにずっと言われてたんで。これでヤス(伊藤)にもいじられなくてすみます(笑)」
満塁ホームランの町田隼乙
「片山さんに狙い球を絞れと言われて。チェンジアップを待てばスライダーが入ってきても打てるので、チェンジアップを狙いました。相手投手も苦しいところだったので、余裕を持って打席に入れました。感触は最高でした」
辻空コーチ
「長坂は最初から飛ばして3回くらいまで、ぐらいのつもりでした。自分で行くと言って投げちゃいましたね。すごいです。投手陣も休められて良かったです」
(写真:中原写真事務所)
(記事: HISATO)